SP_先行上映舞台挨拶レポート1

先行上映舞台挨拶レポート①

『この男子、石化に悩んでます。』DVD発売を記念し、2014年11月29日より下北沢トリウッドにて先行上映が開催。『この男子、宇宙人と戦えます。』とカップリング上映された12月1日、山本蒼美監督による舞台挨拶&ティーチインが行われました。


上映後、山本蒼美監督が登壇、作品になぞらえ「田万里と同じようにあがり症なので、今石化してます(笑)」という挨拶から舞台挨拶が始まりました。
「この男。」シリーズを4年連続で毎年新作を出していることを「感慨深い」と、第一弾『この男子、宇宙人と戦えます。』でデビューした当時を想い返し、「約30分近い尺のアニメを初めて1人で作ったので、全然わからないことばっかりで…それが作品にもあらわれていたと思いますが、色々試行錯誤した思い出があります」と語る山本監督。

まずは『宇宙人』と『石化』の両方に平川大輔さんが出演されていることから、平川さんのお話からスタート。
『宇宙人』でのシロ役の演技に「平川さんはリテイクがほぼ無く、イメージ通りで完璧だった」と振り返る監督。しかし当時は、声優とのお仕事もアフレコ現場を体験するのも初めてだったため、「流石ベテランの方は凄いんだな」と技術的なものとして考えていたそう。ところが『石化』でも、ほとんどディレクションする必要がないくらい、思い描いた穂仁原そのもので「それとなくお伺いしたら、とても深く台本を読み込んでいて、穂仁原について話していないバックボーンまで全部読み取って下さっていた。だから何も言わずとも役そのものだったのだと2作品一緒にお仕事させて頂くことでわかりました」と、役に真摯に向き合う平川さんの姿勢に感動した面持ち。

田万里役の蒼井翔太さんの配役については「実は声優について全然詳しくないため、それまで蒼井さんのことを知らなかった」という。「蒼井さんが出ている舞台をたまたま観たスタッフから、山本さんが好きそうな声質で作品に合うと思うと推薦されて、初めて知りました。本当に田万里にぴったりで、可愛いだけでなくナイーブな心情もよく理解して頂け、とても良い感じに演じて貰えました」「石化のキャスティングは、自画自賛ですけどとてもうまくいったと思います!」と笑顔で語りました。

さらに、エンドクレジット後のラストシーンについて、実はアフレコ後に映像を変更したという驚きの事実も明かされ「当初はもっと2人の状況を絵でも見せていく演出で作っていましたが、あまりにも平川さんの最後の一言が良かったので、声のお力を最大限お借りし、絵で全部見せてしまわずに委ねる方向に演出を変えました」と、お互いの力が刺激し合ってあの感動の場面が生まれたエピソードも披露されました。

山本蒼美監督作品は、鮮やかな色使いや独特な画面作りが特徴的ですが「従来のTVアニメとはちょっと違う表現、映像として見て楽しいものを目指して作っています。漫画が好きなので、漫画っぽい表現やイラスト的なテイストをアニメに取り入れられたらと」シリーズ通してフキダシを使ったシーンがあったり、『宇宙人』では紙芝居っぽく動かしたり、『人魚』ではマスキングテープを多用しテクスチャとして貼りこんだり、色々と工夫をしているとのこと。

『石化』でも、背景の塗りだけでなく、人物などにも筆のムラ調をわざと活かしたマットな塗りが施され、これまでのイラスト的な絵作りとはまた違った画面作りが行われています。こうした手法はTVシリーズのアニメや長編劇場作品など、大人数で作っていくような作品では挑戦しにくいものの、95%山本蒼美監督の手で作られている『この男。』シリーズだからこそできる、そういうチャレンジでもあるようです。
「これからも普通のアニメではできないことや、静止画のイラストで挑戦するようなことを、アニメに取り入れていきたい」と意欲を見せていました。

そしてお話は、作品の核心ともなるテーマについて。『石化』という一風変わったアイデアは「生きていると、辛いことも起きる。そんな時に心が石だったら辛いことに心が振り回される事はないのにな…と、穂仁原に近いことを考えていた」ところから着想を得たそう。「でも心を固く閉ざしていても状況は変わらない、傷つくことから得られる成長も大事、それを‘石’を通して描けたら」という作品誕生への想いを語りました。


ご来場くださいました皆さん、ありがとうございました!